IV. 精神科作業療法プログラムとしてのアロマセラピーの意義と利点

作業療法プログラムとしてのアロマプログラムの利点を以下にまとめる。


1.作業療法プログラムへの参加意欲がわかない対象者に対しても、比較的導入しやすい。これは様々なメディアで「アロマセラピー」は「癒し」のキーワードとセットで使われており、対象者の「精神科のリハビリ=癒し」といったイメージに合致しているためではないかと考えられる。

2.能動的な行動が発現していない段階であっても、受動的にマッサージされることで急性期疲弊後の心身を心地よさと共に休ませることが可能である。

3.マッサージによる触覚刺激は病的世界から現実的世界へ移行するきっかけになる。

4.自己の体を意識させることが「自発的な健康管理」や「他者への労り」の意識を芽生えさせる。

5.入院初期から退院後まで幅広い活用が可能である。作業の段階づけがしやすく、達成感・有能感を得やすい。

6.作業療法プログラムでは疎かにされがちな嗅覚へ刺激を与えることが可能なため、大脳新皮質機能が低下している対象者にも「心地よい刺激」を与えやすい。この理由は、香り刺激が大脳辺縁系に直接作用するためと考えられる。


以上のように、アロマセラピーを用いた作業療法では香りが直接脳を刺激するため、今後は精神科だけではなく、認知機能の低下している高齢者に対する適応も可能になると考える。