V. 終わりに

作業療法は診療報酬の対象となっているため、その治療目的を満たし、作業療法の1プログラムとしてアロマプログラム行う場合は診療報酬の対象となります。そのため治療的意義はもちろん、経営面からも作業療法の枠内でアロマセラピーを行う施設が今後増加するものと予想されます。しかし現状では信頼できる団体でアロマセラピーを学んだ作業療法士が行っている施設はほとんどありません(2008/02/14現在、日本アロマセラピー学会会員の作業療法士は4名に過ぎない)。
作業療法プログラムとしても多くの利点を持つアロマセラピーですが、実施する際は現在のように「雑貨」の範囲で低濃度の精油を用い補助的に使用する場合であっても安全への十分な配慮が必要であると考えます3)。さらに医療として精油の有効成分を活用するために高濃度のオイルを用いるとなれば、作業療法の業務範囲を超える可能性もありアロマセラピーを理解している医師・看護師との密な連携が必要となってきます。
作業療法として「なんとなく雰囲気を作るため」に精油を用いることは危険を伴います。そのため医療従事者を対象とした学会へ入会するなどし、医学的な正しいアロマセラピーの知識を持った上で作業療法プログラムとして取り入れることが大切であると考えます。


日本アロマセラピー学会のご紹介

一般社団法人 日本アロマセラピー学会
http://www.aroma-jsa.jp/

活動指針
日本アロマセラピー学会は、アロマセラピーを医療に正しく応用する為に臨床医を中心に組織された医療従事者の全国的な研究団体です。医療分野に正しいアロマセラピーを普及させることを目的に有志で1997年7月に発足された「メディカルアロマセラピー連絡会」が昇格し同年11月正式に「日本アロマセラピー学会」として活動を開始。1998年2月には大阪の千里ライフサイエンスセンターで第1回総会を開催。参加者は全国から510名もあり医療分野でのアロマセラピーの関心の高さが伺えました。医療分野でのアロマセラピーは、従来から言われている精神世界のアロマセラピーではなく、医学的な根拠に基づいたアロマセラピーである必要があります。しかし、多くの書物が日本でも出版されているにもかかわらず、医学的な見地から納得のいく物はありませんでした。医療分野でアロマセラピーを使うには、代替医療や補助療法として見解を十分理解し、インフォームド・コンセントを十分行い、気持ちいいだけのアロマセラピーではなく、ケアやキュアを目的としたアロマセラピーを実践する必要があります。


参考文献

1) 川端一永,吉井友季子,田水智子/協力 日本アロマセラピー学会,日本アロマケア学会:臨床で使うメディカルアロマセラピー,メディカ出版,2000
2) 山根寛:精神障害と作業療法 第二版,pp34-48 pp75,三輪書店,2003
3) 加藤和貴 細沼彩和美:精神科OTで行うアロマセラピー,精神科作業療法協会第40回全国学会,2004
4) ハーバート・ベンソンほか:リラクセーション反応,星和書店,2001
5) 中井久夫:精神科治療の覚書,pp286,日本評論社,1982
6)Irvin D. Yalom, Sophia Vinogradov:グループサイコセラピー,金剛出版,1991
7)ナード・ジャパン ナードアロマテラピー協会 編集:NARDケモタイプ精油事典,2003
8)山根寛・二木淑子・加藤寿宏:ひとと作業・作業活動,三輪書店,1999
9)今西二郎 編:医療従事者のための補完・代替医療,金芳堂,2003
10)山根寛ほか:ひとと集団・場,三輪書店,2000
11) 加藤和貴:アロマセラピーを用いた精神科作業療法の紹介,日本アロマセラピー学会学会誌,2008