COPMニュース 第1号

発行日:1998.7.24


COPMにご関心をおもちいただきありがとうございます。 COPMを、皆さんの臨床の中にいかに組み込んでいくかは、なかなか難しいけれど取り組みがいのある課題です。

というわけで、今後もネットワークを作って相互に情報交換の場をもちたいと考え、これまでにご連絡いただいた方に、このニュースをお送りします。疑問や意見、最新情報を中心に構成していきたいと思っています。

私は、COPMが日本の作業療法の臨床でどのように役立つか、何か変更したり、付け加える必要があるかどうかを明らかにしたいと思っています。そのためにも皆さんからのご意見をお聞きしたいと考えています。


これまでのご質問と私からの回答です。


Q.第3段階で問題を書く時には、重要度の高い順に書くのですか。

A.いいえ。大事な問題はどれかをもう一度クライエントと話して決めて下さい。第1段階であがらなかった問題が出てくることもあります。その時はその問題の重要度も訊ねます。(マニュアルp.49、WFOTのプレワークショップからの情報)


Q.思った以上にクライエントの認識が歪んでいてショックでした。これではCOPMはできないのではないですか。

A.COPMはクライエントの認識を評価するものです。歪んでいるかどうかを判断するためのものではありません。(マニュアルp.45-46)。


Q.心理的に問題のあるクライエントにとっては、作業遂行のレベルで問題を考えることは現実に直面 しなくてはならないので負担になります。どうしたらいいでしょう。

A.身体や精神など遂行要素のレベルでしか問題を語りたがらないクライエントはいます。まずクライエントの状態を受け入れましょう。もっと時間が経ったり何かのきっかけで作業遂行について考えるようになるかもしれません。COPMがきっかけになって作業遂行について考え始めるクライエントを経験しています。発症から常に医学モデルで治療を受けてきたクライエントは作業遂行の問題を考えるのが難しいという印象をもっている作業療法士もいます。


Q.COPMのときには作業遂行の問題について考えるのですが、その後はまた身体的な訴えのみに戻ってしまいました。

A.COPMは作業遂行に焦点を当てたクライエント中心の実践をするためのひとつ手段に過ぎません。COPMを作業療法のプロセスの中で生かし、効果 判定に使っていくためには、さらに多くの具体的な知識や技術が必要になると思います。それをこれから蓄積し共有していきたいと思います。


Q.作業療法士が対処困難な問題がCOPMで出てきたときに、他の専門職に紹介するということができません。近くに適当な人がいなかったり、そうすることでクライエントが見捨てられたように思ってしまい何も話してくれなくなるからです。

A.マニュアル(p.46-47)には、クライエントのすべての問題に個人的責任があると思うべきでないと書かれていますが、実際にどのようにクライエントと話すかについて良い考えがあったら教えてください。また、これはチームアプローチのテーマでもあります。
COPMを実施する上での質問を歓迎いたします。是非お知らせください。


モントリオールで開かれたWFOTのプレワークショップ「Enabling Occupation(作業を可能に): カナダのOTガイドラインとCOPMを使って」に、上村と古山と吉川が参加しました。「Enabling Occupationとは人が自らの環境の中で役立つあるいは意味のある作業を選んだり、生活の中に構造化したり、遂行したりできること」*だそうです。COPMはクライエントは自分の生活を自分で考え決めることができ、自分の健康(治療)に責任をもつ人だという前提にもとづいています。作業療法士はクライエントがそうできるように援助する立場です。従って、クライエントの代わり決めたり、クライエントに責任を押しつけることはできません。人は助けられながら、できる範囲で自分で決め、自分で責任をもつということに価値があると考える作業療法士にとって、COPMは上手く使うのは難しいけれど、たいへん役に立つ道具だと思います。

*Townsend, E (Ed) :Enabling Occupation: An Occupational Therapy Perspective. Canadian Association of Occupational Therapists, 1997.(「作業療法の視点:作業ができるということ」として大学教育出版より2000年10月発行)
大学教育出版から発刊された「COPMマニュアルと評価表」1500円(税別)の裏表紙に評定カードと評価表見本が入っています。評価表のみの販売については交渉中です。(第2刷以降「COPMカナダ作業遂行測定」と改題)


以下にCOPMの主要文献をあげます。


Pollock, N: Client-centered assessment. Amer J Occup Ther 47, 298-301, 1993. (アメリカのOT向けの紹介でカナダOT協会の取り組みと初版のCOPMについて簡潔に書かれている)
Law, M.(Ed.): Client-centered Occupational Therapy. Slack, Thorofare, 1998. (カナダ以外のOT向けに書かれています。クライエント中心の作業療法は難しいが、取り組むに値するものだと痛感できる一冊)(2000年に宮前珠子監訳「クライエント中心の作業療法」として協同医書から出版)
Townsend, E. A.: Good Intentions Overruled: A Critique of Empowerment in the Routine Organization of Mental Health Services. University of Toronto Press, 1997.(カナダの精神科における考え方と実践について)
カナダOT協会(CAOT)のガイドライン Occupational Therapy Guidelines for Client-Centred Practice. Occupational Therapy Guidelines for Client-Centred Mental Health Practice. この2冊と前述のEnabling Occupationはクレジットカードを使って、CTTC, Suite 3400, 1125 Colonel By Drive, Ottawa, Ontario, Canada K1S5R1に郵送、又はFax: 1(613)523-2552で購入できます。インターネットご利用の方はカナダOT協会のページを見てください。
http://www.caot.ca/