COPMニュース 第3号

発行日:1999.2.17


「COPMマニュアルと評価表」の初版1000冊の在庫がほぼなくなったそうです。COPMの知名度はあがったとは思いますが、皆さんの臨床では役立っているでしょうか。私は、山口県と熊本県でCOPMの講習会をしました。


皆さんからのご質問にお答えします。


Q.「麻痺を治して」とか「先生の言うことなら何でも聞きます」というクライエントに対してはどうしたら良いですか。

A.COPMは作業遂行の問題を明らかにすることが目的なので、1日のスケジュールや活動の具体例をあげてインタビューをすすめてみましょう。クライエントが作業遂行の問題に焦点を当てたがらない場合もあります。そのひとつにセラピストを治療内容を決定するエキスパートだと思っている場合があります(マニュアルp.28-29)。あるいは、クライエントの関心の中心が身体機能であって作業遂行でない場合もあります。クライエントの本当の悩みに共感するところから徐々に作業遂行の問題を共に考えることができたという報告もあります(次回OT学会で発表予定)。


Q.失語症のクライエントにはどうしたらよいでしょうか。

A.失語症やその他の認知障害のためにCOPMに自分では答えられないクライエントがいます(マニュアルp.46)。セラピストが「正しいと思う」問題を答えないからと言って、クライエントにCOPMを実施できないわけではありません。どんな場合でもクライエントの視点を作業療法に取り入れることは大切なので、クライエントの視点を取り入れる工夫を凝らすことになるでしょう。この点に私たちの情報の蓄積と共有が必要だと思っています)。


Q.インタビューが誘導尋問になってしまいそうです。

A.まず誘導尋問になりそうかどうかを認識することが必要です。私はクライエントとCOPMを行う中で、自分自身の価値観や偏った思いこみに気づくことが何回もありました。人は皆それぞれ大切に思う事柄が違います。目の前のクライエントが何を大切に思っているを知る最良の方法は、本人に聞くことです。


Q.「やりたいことがない」というクライエントにCOPMを実施するのはクライエントにとって無意味です。また、どうせできないのに「したいことは?」と聞くのは気の毒ではないですか。

A.クライエントの作業遂行の問題を明らかにするためには、クライエント自身が自分の作業遂行に関心を向けなければなりません。そのためのオリエンテーションは、とても難しいと感じています。「したいことは何ですか」と聞くだけでは到底不十分です。「今していることの中でたいへんなこと」とか「困っていること」などという表現からはじめることができます。クライエントがインタビューを苦痛だと感じている様子ならCOPMを続けてはいけません。COPMはクライエント中心の実践のための道具なのですから。クライエントもセラピストも気持ち良くCOPMを実施できるやり方を探しましょう。


Q.COPMはインフォームド・コンセントに使えますか。

A.インフォームド・コンセントの道具になります。クライエントはCOPMによって作業療法が何かがわかるでしょうし、これから作業療法で何をするかを決めることに参加することになります。
カナダ作業療法士協会から1997年に発刊されたEnabling Occupation: An Occupational Therapy Perspective. では、COPMを使った作業療法を作業遂行プロセスモデルとして7段階で説明しています。

 

  第1段階:作業遂行の問題に名前をつけ、確認し、優先順位をつける COPMなどを使って作業遂行上の問題が何かクライエントと共に決めます。
  第2段階:理論的アプローチの選択  NDT、SI、行動療法、代償的アプローチなど作業遂行でりようできる理論やアプローチの方針を決めます。
  第3段階:作業遂行要素と環境要因の明確化 作業遂行の問題を生じさせている要因が何かを検査や観察を通して評価します。
  第4段階:利点と資源の明確化 作業を遂行する上でのクライエントの利点、強みとなるものを明らかにします。社会的サポートや担当の作業療法士自信の強みについても考えます。
  第5段階:めざす成果の決定と行動計画 何を達成したら成果があったとするのかをクライエントと共に決めます。就職することが最終的な目標である場合でも、院内でのボランティア的仕事を探して行ってみるとか、就職情報を収集するというように、とりあえずの達成可能な成果を決めて、そこに行きつくまでにするべき行動の計画をたてます。
  第6段階:作業を通して計画を実施 目標とする成果を達成するために決めた作業を行います。就職情報の収集のために求人情報誌から条件にあった就職先をリストアップするとか、仕事の耐久性を高めるためにスケジュール通 りに1日を過ごしてそれを記録するなどがあります。
  第7段階:作業遂行における成果の評価  COPMや他の評価を再度行い、目標とした成果が達成されたかどうかをみます。作業遂行プロセスモデルでは、作業療法士はクライエントと共にはたらく(work with)と表現されています。協業(collaborate)という言葉も多く使われていて、作業療法は作業療法士とクライエントが共に作り上げるプロセスとして示されています。

また、Enabling Occupationには、作業療法のクライエントには障害をもつ人ばかりではなく、その他の人々も、企業などの組織も、行政などのコミュニティも含むと書かれています。作業療法とは、クライエントが作業をできるようにするサービスなのです。従って、作業療法士はクライエント自身へのサービスと同様に、作業療法を実施する環境や私たちが暮らす社会環境へも取り組まなければなりません。
今回は、日本におけるCOPMの利用と問題点に関するアンケートを同封しました。回答にご協力いただけると幸いです。
寒い季節ご自愛ください。