COPMニュース 第4号

発行日:1999.5.28


日が長くなり、一日も長くなって得をしたような気分になる季節となりました。皆さまには、新年度のあわただしさも一段落し、学会シーズンを迎えお忙しいことと思います。
COPMのマニュアルの第2刷は「COPMカナダ作業遂行測定」という題名になりました。日本で発表された(される予定の)関連文献は以下の通りです。



■渥美恵美、佐藤善久:面接技法としてのCOPMの有用性。作業療法 17(特別号) 88, 1998.
■有坂尚子、山下あきみ、畑野栄治:訪問指導におけるCOPMの利点。作業療法 17(特別号) 201, 1998.
■梅崎敦子、細川千絵、吉川ひろみ:患者ー治療者間の視点共有の重要性。作業療法 18(特別号)、223、1999.
■Evert, M. M. & 長谷龍太郎:21世紀の作業療法をめざして。OTジャーナル 31, 1017-1022, 1997.
■笠原恵、高橋美帆、山勝裕久、徳江与志子:COPM初回評価時の患者とセラピストの評価間較差。作業療法 17(特別号) 141, 1998.
■古山千佳子、吉川、上村智子:作業遂行プロセスモデルを利用した症例検討。作業療法 18(特別号)、161、1999.
■吉川:2つの作業遂行モデルの比較:Pedrettiのモデルとカナダモデル。作業療法 18(特別号)、463、1999.
■吉川、近藤敏、上村:生活における活動の主観的評価:COPM再テスト信頼性の検討。第36回日本リハビリテーション医学会、1999.
■吉川:COPMの紹介。日本作業療法士協会ニュースNo. 201, 9, 1998.
■吉川、上村:カナダ作業遂行測定(COPM)を日本で使用するための課題。作業療法 17(特別号), 303, 1998.  吉川、上村:カナダ作業遂行測定(COPM)の使用経験。作業療法 17(3), 230-237, 1998.
■吉川、古山千佳子、近藤敏、常本浩美、有坂尚子:作業療法士に適した日常生活活動評価法の探索。作業療法 17, 125-132, 1998.
■吉川:COPMマニュアルの紹介。OTジャーナル 31(7), 710-711, 1997.


日本におけるCOPMの使用に関するアンケートにご協力いただきありがとうございました。結果 は第2回アジア太平洋作業療法学会(9月11~14日、台湾)で報告します。

和文抄録です。

目的:日本におけるCOPMでの利用について明らかにする。
方法:COPM講習会に参加したか、著者にCOPMに関して連絡をとった165名の作業療法士を対象に、COPMを使った経験、日本での利用における利点と問題点について調査した。
結果:91名(55%)から回答があった。その内COPM利用者は48名(53%)だったが、再評価まで実施したのは15名だった。43名はCOPMを実施しておらず、その理由は評価法を調べたり評価を実施する時間がないというものが多かった。COPM利用者の半数以上が身体障害をもつクライエントに実施していた。所要時間は平均34分(最短19~最長50分)だった。評価者のCOPM実施に対する認識はさまざまだったが、再評価まで実施した者は遂行度6~10、満足度7~9だった。利用者と非利用者で経験年数やCOPMに関する意見に大差はなかった。非利用者に比べ利用者は英語文献から情報を得ている者が多く、所要時間が長すぎると感じている者が少なかった。COPM使用の長所として、作業療法の説明に役立つ、作業療法効果 を記録できる、クライエント中心の実践ができる、などがあげられた。問題点としては、時間がかかりすぎる、適切なクライエントがいない、理論の理解に欠ける、カナダという外国の名前がついている、日本人の受け身的態度や上下の人間関係など文化的問題が指摘された。
結論:日本でCOPMを利用する上で時間の問題がある。COPMを実施する時間を作ることが非利用者では難しいと報告されたが、利用者はその時間が必要だと考えていた。COPMは、理論に基づいていた測定方法なので、その理論が理解されなければならない。


5月22日日本リハビリテーション医学会(鹿児島)でCOPMの再テスト信頼性について報告しました。

抄録です。

生活における活動の主観的評価:COPM再テスト信頼性の検討(吉川、上村、近藤敏)
目的:カナダ作業遂行測定(COPM:Canadian Occupational Performance Measure)は、実際の生活の中で対象者が重要だと考える活動の主観的認識に関する評価手段である。インタビューによって、対象者が認識する遂行度(上手くできると思う程度)と満足度(満足の程度)を10段階で回答を求める。本研究は、COPMの再テスト信頼性を検討することを目的とした。
方法:某市機能訓練教室あるいは某診療所デイケア通所者で協力が得られた14名、年齢59~88歳(平均73.1歳)、男性9名、女性5名を対象に2週間以内にCOPMを2回実施した。対象者は、脳卒中、パーキンソン病、関節炎などの慢性期で、初回から再評価までに医学的にも生活面でもほとんど変化が見られなかった。評価はCOPMの研修を受けた作業療法士2名が行った。級内相関係数と95%信頼区間を用いて、対象者が重要だと考える活動の遂行度の平均である遂行スコアと、満足度の平均である満足スコアの再テスト信頼性を調べた。
結果:級内相関係数は、遂行スコアで0.96、満足スコアで0.89となり、高い信頼性が認められた。COPMは、障害者や慢性疾患をもつ対象者の日常生活活動に対する主観的認識を測定する手段として有用である。


COPMの第3版(36.95ドル)が刊行されています。また、新しい「作業遂行のカナダモデル」の図版(15ドル)も販売されています。詳しくはカナダ作業療法士協会のホームページ(http://www.caot.ca/)で見ることができます。日本語版の改訂については交渉中です。また、COPM評価表だけの販売も検討中です。大学教育出版は二つ折りのA4サイズ(今より大きい)で100部500~1000円と考えているようです。第3版の改訂部分を調べてから準備をすすめることになっています。

私は、昨年度からの科学研究費を使ってCOPMの研究をすすめています。今年度はCOPMを使った作業療法事例を含む報告書を作成したいと思っています。報告書に事例を提供してくださる方を募集しています。是非ご協力ください。ご協力くださる方は、電話、Fax、e-mailなど、いつでもお知らせください。