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はじめに |
近年、精神障害者が自分のストレスに対処できるようになること(stress management:ストレスマネジメント)が、本人のエンパワメントや生活の質を維持向上する上で大事な能力として注目されている。
ストレス対処技能の方法にはいくつかあげられる。
1) ストレスや、ストレス対処法を知る(情報提供)
2) ストレスの原因となっている問題そのものに対処する方法を身に付ける
(対処技法:問題解決技法.心理教育.SST.認知療法. Time management. Assertive training. etc)
3) 自分のストレス反応を軽減する(リラクセーションテクニック)
などである。
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1.ストレスとは?
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闘争-逃走反応 (キャノン)
命を懸けて戦うか逃げるかするような状況に直面したとき、私たちの遠い祖先は生き延びるためにストレス反応を起こしました。
ところが、私たち現代人は、同じストレスを起こしながらも、実際に体を使って戦ったり、逃げたりして、そのエネルギーを発散させず、そのエネルギーを心身に溜め込んでしまいます。
そのたびごとに、息を詰め、筋肉をこわばらせ、血圧を上昇させて、不安・怒りなどといった形で、心身に負担を負わせているのです。
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2.ストレッサーとは?
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「ストレス反応を起こす刺激」
生物的ストレッサー (薬・タバコ・花粉・ウイルス)
心理的ストレッサー (別れ・不安・緊張・恐怖)
社会的ストレッサー (自分を取り巻く環境の変化・入院・家族の変化)
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3.ストレス脆弱性仮説
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分裂病の発症・再発は、生物学的脆弱性と、心理社会的ストレスとの相互作用からおこるとされています。 ストレスの影響を弱めたり、それに対する対処法を身に付けることによって、経過の改善につながります。
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4.なぜリラクセーションが必要か?
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ストレスが身体に与える影響 (東京ストレスマネジメント引用)
ストレス反応 |
生理学的反応 |
リラクセーション反応 |
緊張 |
筋肉 |
弛緩 |
増加 |
心拍数 |
減少 |
上昇 |
血圧 |
正常値 |
収縮 |
血管 |
拡張 |
冷たく汗ばむ |
手足 |
暖かくさらさら |
速波 |
脳波 |
アルファー波 |
覚醒駆動型 |
脳内ホルモン |
静穏快感型 |
増加 |
基礎代謝率 |
減少 |
消費 |
エネルギー |
蓄積 |
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5.ストレス対処技能
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ストレスをすっかり解決するのではなく、ストレスを抱えながらもなんとかやっていけるように自分のストレスに対処する技能を身に付ける。
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6.ストレス対処技能におけるリラクセーションテクニックの位置付け
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他のアプローチ(薬物療法・作業療法・精神療法・環境調整 etc… )
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ストレス対処技能
★ストレスそのものや対処法についての情報を知る(情報提供)
★ストレスの原因となっている問題に対処する方法を身に付ける(対処技法)
★ストレス反応を軽減する(リラクセーションテクニック)
↓
「対処可能性が増す」(エンパワメント)
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7.本人がどう体験しているか?
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主体的にストレスに対処できる可能性を増すためには、治療者側の押し付けではなく、本人の意志で自分にあった対処法を選択してもらう必要がある。よって、「本人がどう感じているか?」に焦点を当てることが重要である。
効果測定用紙を利用して、セッション前の自分の「心とからだの状態」に意識を向け、感じ、意識化してもらい、セッション後に再度自分の心とからだの変化について記載してもらうことを通 じて、リラクセーションのセッションをどう体験し、どの程度自分の回復に役立っているかを意識化してもらい、主体的にセッションを利用してもらうための一助にしている。
セッション開始前に比べ、セッション開始後は、こころと身体がリラックスしていると、参加者のほとんどのものが主観的に体験している。